人生のエンディングを考える(その3)-遺言について(その2)-


 みなさんこんにちは、今日も遺言についてお話ししたいと思います。前回は、遺言の意味、遺言できる内容、相続人や遺贈の受贈者、承継する財産などについて、お話ししました。今回は、遺言のやり方についてお話ししたいと思います。

1. 遺言のやり方

 自分の意思を伝える(残す)方法は、現在であれば、映像の録画、音声の録音、ワープロの文書など、いろいろと考えられます。ただ、遺言の場合、法律(民法)で認められているのは、遺言の内容を紙に文書化した「遺言書」のみです。「遺言書」の書き方や方式については、民法上の規定に従って書かなないと有効とはなりません。これまで、「遺言書」が法律上の要件を満たしていて有効か、それとも無効かを争う裁判が多数行われ、多くの判例が残っています。引き継ぐ方に争いごとを残さないためにも、「遺言書」を作成する前に法律上の要件は知っておいた方が良いでしょう。

民法上、遺言書には5つの方式が定められています。
 ① 自筆証書遺言
 ② 公正証書遺言
 ③ 秘密証書遺言
 ④ 特別方式(危急時遺言)
 ⑤ 特別方式(隔絶地遺言)
④と⑤は、事故や遭難及び巨大災害などの、特別な事態のときの遺言ですので、今回は省略したいと思います。今回は①から③についてお話ししたいと思います。その前に遺言全般に共通することを少しお話したいと思います。

遺言は、遺言する方の意思表示ですので、いつでも変更することができます。2つ以上の遺言書に同じ財産に関することが書かれていた場合、作成した日付が一番新しい(最近)の遺言書の内容が最終的な意思表示と扱われ、その内容が有効になります。また、①から③の方式は、何を選んでも良く、1回目は①で作成して、2回目は②で作成しても問題ありません。

2.各遺言の方法について

自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の方法についてみていきたいと思います。

(1)自筆証書遺言
 自筆証書遺言は、よく用いられる遺言書の方式です。この方式であれば、いつでも遺言する方の意思を文書に残すことができます。しかし、文書の書き方は人それぞれであるため、混乱が生じやすい方式です。民法はでは、自筆証書遺言が要件を定め、この要件に合致しない遺言は有効性が否定されます。順にみていくことにしましょう。
(a)自筆であること
 自筆証書遺言は、すべて遺言者自身の手書きあることが必要です。ワープロでの作成や他者の代筆はできません。また、無用の混乱を避けるため、消せない筆記具(ボールペン・万年筆等)を使用することをお勧めします。書き損じても、明らかな書き誤りであれば、二重線でその個所を抹消し印鑑を押印して、訂正を書き入れても問題はありません。遺言者自身の意思が自身の筆記で残されていることが大切です。あと、何のための文書かはっきりさせるため、冒頭に“遺言書”とタイトルをつけるなど、遺言書であることを明確にしておいた方が良いでしょう。
(b)日付の記入
 遺言書が複数ある場合に、どの遺言書が遺言者の最終意思なのかを明確にするため、日付の記入が必要です。日付の記入がないと遺言書は無効です。日付は「平成30年5月31日」などと、暦上の日付を記入するのが明確ですが、「75歳の誕生日に記す」など明確な日を特定できるものであれば有効とされます。
(c)氏名の記入
 氏名の記入も必須です。これも混乱を避けるため生年月日と住所及び本籍も記入しておいた方が良いでしょう。このとき、夫婦二人の連名で署名するなどしないようにします。遺言書の具体的な内容とも関連しますが複数の人の署名があると、だれの意思表示なのか混乱するので遺言書の有効性に問題が生じます。遺言書は、遺言者の自身の意思のみを示していることを明確しなくてはなりませんので、記述した本人のみ氏名を記入(署名)してください。
(d)印鑑の押印
 遺言書を記述した遺言者の印鑑を押印します。実印である必要はありません。指印でも有効になった事例もあります。逆に、花押は押印の要件を満たさないとされています。

 これらが、自筆証書遺言での民法で法定されている要件です。作成した遺言書の保管については、相続が開始されると、自筆証書遺言は家庭裁判所の検認(検査)をうけ有効性を確認されますので、封筒に入れ封印して保管しておくのが良いでしょう。

(2)公正証書遺言
 公正証書遺言は、公証人に遺言を作成してもらいそれを公正証書のとして、公証役場で保管する形の遺言です。この方式では、遺言の内容は公証人がまとめ、遺言書を作成します。公証人は専門的な知識と経験がありますので、遺言について相談することができます。心配事がある方や身体的に自筆証書遺言が難しい方などは、公正証書遺言の方式で遺言を作成すれば、安心して遺言書が作成できるでしょう。半面、他の人に遺言書作成をお願いすることになりますので費用と時間は必要です。つぎに、公正証書遺言の方式を確認したいと思います。
(a)遺言の内容の口授
 遺言者は公証人に遺言の内容を口頭で説明します。説明は遺言者の方が遺言の内容を公証人に対して、一方的に説明する形をとります。遺言者本人の意思が正確に反映されるようにします。
(b)証人2名の立会い
 口授にあたっては公証人のほか、2名の証人が立会います。立会いがないと遺言は無効になります。
(c)遺言書の作成と読み聞かせ
 公証人は口授の内容を遺言書に記述して、その内容を遺言者及び証人に読み聞かせます。
(d)各自の署名押印
 遺言書の内容が正確であることが確認された後に、遺言者、証人2名が遺言書に署名と押印を行います。
(e)公証人の付記
 一連の手続きが正当に完了したことを公証人が付記して署名押印します。

 この方式により作成された公正証書遺言の原本は公証役場に保管されます。相続が開始されたときは、相続人は公証役場に遺言書の引き渡しを求めます。公正証書遺言は、自筆証書遺言と異なり家庭裁判所の検認は不要です。相続は時間的な制約がある場面もありますので、時間の短縮もできることになります。

(3)秘密証書遺言
 秘密証書遺言は、遺言者が作成した遺言書を公証人の公証を受けて保存する方式です。遺言者が作成した遺言書の存在は知らせておきたいが、その内容は秘密にしておきたいときに有効な方法です。方式の特徴について確認したいと思います。

(a)遺言者が作成した遺言書であること
 秘密証書遺言の場合は、自筆であることは求められていませんので、パソコンやワープロで作成した書面でも大丈夫です。また、行政書士などによる代筆によるものも可能です。ただし、作成日付の記載と署名押印は必要です。
(b)遺言者の封印
 (a)で作成した遺言書を封筒に入れて封を閉じ、遺言書に押印した印鑑と同じ印鑑で封筒に封印を押印します。
(c)公証人の面前での申述
 (b)で封印した遺言書について、証人2名と公証人1名の目の前で、公証人に対して自己の遺言書であること並びに筆者(遺言者)の氏名及び住所を申し述べます。
(d)公証人の署名
 公証人は、(c)の申述を聴取後に、遺言書の提出日付及び遺言者の申述を封紙に記載して、遺言者及び証人とともに、署名押印します。

 秘密証書遺言は、遺言の内容を相続の開始まで明らかにしない方法として有効です。ただ、この方式で遺言を作成する方はあまり多くないのが現状です。また、秘密証書遺言は、相続が開始したときは、家庭裁判所の検認を受ける必要があります。

3.遺言を残さないとしたら

 遺言者が自らの意思を引き継ぐべき方に残すのが遺言です。ですが、遺言をせずに亡くなる方も多くいらっしゃるのが現状です。その場合は、すべての相続財産は、民法に規定する方法で相続されることになります。これを、法定相続といいます。法定相続は、図1のとおりの割合で財産が配分されていきます。

 基本的な枠組みは図1のとおりですが、亡くなった方に前婚の子や養子縁組及び認知した子が存在すると、話は複雑になっていきます。相続人の間で揉め事にならないよう、遺言で意思表示を明確にしておいた方が良いでしょう。また、単身者の方は、自分は相続人がいないから関係ないと思われるかも知れません。しかし、親戚などと疎遠であったり、相続人のいない場合は、遺言や死後委任契約の形で意思表示を残しておかないと、人生の最後の形がはっきりしないまま人生を終えることになってしまいます。自分らしい終わり方のためにも、単身者でも遺言は作成したほうが良いでしょう。相続人が誰もいない場合は、遺産は最終的には国庫(国の財産)に入ります。

4.結び

 今日は遺言についての2回目ということで、遺言の方式を中心にお話ししました。行政書士は遺言の作成に当たっては、相続人の調査、相続財産の調査、遺言書の作成の助言、公正証書遺言及び秘密証書遺言の証人など、いろいろとお手伝いできる場面があります。遺言を作成したいと思ったときは、お近くの行政書士に相談してみてはいかがでしょうか。次回は、相続のことについてお話ししたいと思います。

 本日も最後までご覧いただきありがとうございました。

(参考文献)
民法Ⅳ補訂版 親族・相続 内田貴 2004年 東京大学出版会
法律学小辞典第4版補訂版 2008年 有斐閣
終活の教科書 クラブツーリズム編 2013年 辰巳出版株式会社
相続の諸手続きと届出がすべてわかる本 弁護士河原崎弘監修 2016年 成美堂出版 

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