農地の賃貸借


 みなさんこんにちは、11回目の投稿になります。今日もよろしくお願いします。今日は農業と農地の話の6回目です。前回は農地法第5条についてお話しました。今回は、農地の賃貸借についてお話ししたいと思います。
 
1.農地に権利設定するとき
 
 農地及び採草放牧地を耕作目的の他の人に貸す場合は、農地法第3条に基づく許可・届出又は農業経営基盤強化促進法に基づく農用地利用集積計画に従い行う必要があります。一般的に土地を人に貸す場合は、賃借権以外にも、地上権、永小作権、質権、使用貸借権などの権利を設定して土地を使用(利用)していきます。農地及び採草放牧地の場合でもこれは同ですが、前提として許可・届出又は農用地利用集積計画に基づく利用が必要になります。
 
(補足)農用地利用集積計画
 農地利用集積計画は、農業経営基盤強化促進法に基づき、農用地(農地又は採草放牧地)の売り手・買い手・貸し手・借り手からの、農地の利用に関する申し出を市区町村が取りまとめて、該当する農用地の需給関係を調整して、農用地の利用促進を図る制度です。
 
2.農地の賃貸借について
 農地法では、農地又は採草放牧地を賃借権については特別な規定が置かれています。
(1)農地法第16条について
 農地又は採草放牧地を賃借権に基づき使用している借り手は、所有権や永小作権などによりで農地又は採草放牧地を利用している人に比べ、民法上の賃借権の規定では保護が弱くなってしまいます。そのため、農地法第16条では、賃借権を保護するためつぎの規定を置いています。

(農地又は採草放牧地の賃貸借の対抗力)
第16条 農地又は採草放牧地の賃貸借は、その登記がなくても、農地又は採草放牧地の引渡があつたときは、これをもつてその後その農地又は採草放牧地について物権を取得した第三者に対抗することができる。

 「対抗」とは自らの法律上の権利の正当性を主張するとでもいえばよいでしょうか。一般的に第三者に「対抗」するためには、不動産の場合は登記が必要になります。所有権や永小作権は登記がしないと、第三者に対抗できません。しかし、賃借権の場合は、登記が当然にできる訳ではなく、賃貸借の契約で、賃借権を登記する特約をして、貸し手と借り手が共同して賃借権を登記する必要があります。現実には、貸し手の協力が得られないなどで登記ができない場合が多くあります。この救済策として、農地法第16条の規定は、借り手の立場を保護するようになっています。売買などで第三者に農地が譲渡されても、借り手は自らの賃借権を主張して、耕作を継続できるようになっています。借地借家法の規定と趣旨は同じと言えます。

(2)農地法第18条の許可について
 農地法第16条で、農地の借り手の対抗要件を保護する規定を置いています。この保護規定に関連して、農地法第18条では、農地の賃貸借を解除・解約の申入れ・合意解約・契約更新の拒絶をする場合は、都道府県知事の許可を事前に受けなけなければ、それをすることができないと規定しています。条文はつぎのとおりです。

(農地又は採草放牧地の賃貸借の解約等の制限)
第18条 農地又は採草放牧地の賃貸借の当事者は、政令で定めるところにより都道府県知事の許可を受けなければ、賃貸借の解除をし、解約の申入れをし、合意による解約をし、又は賃貸借の更新をしない旨の通知をしてはならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。(以下略)

 このように、農地法では地貸借の契約を終了させる行為に規制を置いています。しかし、以下のような理由のある場合には、都道府県知事の許可は不要となっています。
① 農業協同組合又は農地中間管理機構の行う信託事業の信託財産にかかる場合
  (信託開始前からの賃貸借及び賃貸借の契約終了日が1年以内にない場合を除く。)
② 合意解約の契約成立日が、農地引き渡し日の6ヶ月以内で、その旨が書面で明らかな場合。
③ 合意解約が民事調停法の農事調停で行われる場合。
④ 10年以上の賃貸借の定めがある賃貸借の更新を拒絶する場合。
⑤ 水田裏作を目的とした期間の定めのある賃貸借の更新を拒絶する場合。
⑥ 解除条件付き賃貸借として農地法第31項の許可を受けた賃借権を、あらかじめ農業委員会に届出て解除する場合。(解除に相当な理由のある場合に限る。)
⑦ 農業経営基盤強化法第19条で公告のあった農地利用集積計画によって設定された解除条件付きの賃借権を、あらかじめ農業委員会に届出て解除する場合。(解除に相当な理由のある場合に限る。) (以下略)
 この制度は、不当な理由で賃借人の賃借権を奪われることを防止して、農業の安定的な経営の維持と発展を促すものと言ってよいでしょう。これらに該当する場合は、農業委員会に対して通知を行います。

3.農地法第18条の手続きと許可基準  
(1)手続き
 農地法第18条の許可を申請する場合は、申請人は都道府県知事に対して許可を申請することになります。申請の提出先は、市区町村の農業委員会となります。処理の流れは図1のとおりです。
申請人は、合意解約の場合は貸し手と借り手の連署になります。解除の通知・解約の申し入れ・更新拒絶の通知の場合は、借り手又は貸し手が単独で申請人となります。また、申請は解約申し入れの3ケ月前までに行う必要があります。

(2)許可基準
 農地法第18条の許可申請があった場合、都道府県はつぎの基準で申請の内容を審査して許可・不許可を決定します。
① 賃借人に信義に反する行為があった場合。(賃料の不払い等)
② 農地を転用することが相当と認められる場合。
③ 賃貸人が自ら耕作するのが相当な場合。
④ 賃借人が農地法第36条の農地中間管理権取得に関する勧告を受けた場合。
⑤ 農地所有適格法人の要件を欠いた法人から賃貸している農地の返還を受ける場合、
  農地所有者が農地所有適格法人の構成員でなくなる場合。
⑥ その他正当な事由がある場合。
 都道府県の審査結果は、許可・不許可の場合とも理由付して申請人に通知されます。
 

3.結び

 農地の賃貸借契約の終了については、都道府県知事の事前の許可を制度として設けることにより、一定の制限を加え農業の経営の維持発展を阻害しない制度となっています。次回は、農業と農地についての最終回として、生産緑地について取り上げてみたいと思います。
 
 本日も最後までご覧いただきありがとうございました。
 
(参考文献)
農地法読本三訂版            宮崎直己著 20166月 大成出版社
農地法の解説改訂二版          201611月 全国農業委員会ネットワーク機構 (一社)全国農業会議所
新・よくわかる農地の法律手続き改訂三版 201611月 全国農業委員会ネットワーク機構 (一社)全国農業会議所
農地転用許可制度の手引 改訂6版    20167月 全国農業委員会ネットワーク機構 (一社)全国農業会議所
 

 

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