農地法第3条(農地の権利移転等)


 みなさんこんにちは、8回目の投稿になります。今日もよろしくお願いします。今日は農業と農地の話の3回目です。これまでは農地法の概略と基本的な用語などをお話ししてきました。今回からは、農地法の具体的な内容のお話しをしたいと思います。今日は農地法第3条を中心に、農地の耕作目的等転用以外の農地の権利移動についてお話ししたいと思います。 

1.農地法の構成 

 具体的な話に入る前に、農地法全体の構成を少し見ておきたいと思います。農地法は第1章総則から第6章罰則までの全69条で構成された法律です。それぞれの章の内容は次のとおりです。

 ① 第1章 総則     法律の目的 用語の定義 等
 ② 第2章 権利移動及び 権利移動の制限 転用の制限 農地所有適格法人の規定 
        転用の制限等 農業委員会の役割 等
 ③ 第3章 利用関係の調 農地の賃貸借 公売 強制競売 農業委員会の役割
        整等     都道府県による和解 等
 ④ 第4章 遊休農地に関 利用調査 中間管理機構による調整 裁定 命令 等   
        する措置
 ⑤ 第5章 雑則     違反転用の処分 農地台帳の作成 不服申立て 是正要求
               農業委員会に関する特例 等
 ⑥ 第6章 罰則

 農地法は、全体としてはこのような構成になっています。このなかで特に問題になるのは、第2章と第3章の内容です。そこから、特に中心となる問題をお話ししたいと思います。 

2.農地の耕作目的等転用目的以外での権利移転 

(1)農地法第3条の規定について

 農地又は採草放牧地を売買や賃貸借等をするときには、農業委員会の許可を受けないと、契約に効力が発生せず、登記手続きもできないため、実効的な利用ができないことをご存知でしょうか。当事者の意思だけでは、農地は処分できないのです。これの根拠となっているのが農地法第3条です。 

(農地又は採草放牧地の権利移動の制限)
第3条 農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合及び第五条第一項本文に規定する場合は、この限りでない。
(中間略)

7 第1項の許可を受けないでした行為は、その効力を生じない。

 最初の説明を根拠づける条文です。1項では、農地の所有権移転(売買・贈与等)、地上権・永小作権・質権などの制限物権の設定、使用貸借・賃貸借などの契約による使用収益権の設定は、農地が所在する市区町村の農業委員会に許可を受けなくてはならないとしています。(相続による承継など対象外になるものもあります。)そして、7項では、農業委員会の許可がないこれらの行為は効力がないとしています。また、許可を得ないでこれらの行為をした場合は、罰則の規定もあります。農業委員会では無許可行為がないか調査を行っています。

 なぜこうなっているかは、農地法の趣旨を考えると良く解ると思います。無秩序な農地の権利移転や権利設定を行うと、地域の調和が損なわれ農地の効率的利用の妨げとなるからです。そこで、農地法では権利移動や権利設定の機会に、申請によりその内容を確認するようにしました。 

2.農地法第3条の申請手続き

 (1)申請の構造

 農地・採草放牧地を権利移転や使用収益する権利の設定を行う場合は、契約により行われる場合がほとんどですので、契約をモデルとしてお話ししたいと思います。その構造は図1のとおりとなります。ここで、特徴的なのは契約する当事者(売主と買主)が連署で申請するところにあります。これを、双方申請の原則といいます。(例外として、競売・遺贈などでは単独で申請でできます。)

 このように、売主(貸主)と買主(借主)が共同して申請することで、当事者双方の意思の一致があり、申請内容が真実性であることなどを担保していきます。

 申請が農業委員会に提出されると、農業委員会では申請書と添付資料が適切か審査を行い、必要に応じて現地の調査などを行います。そして、申請内容が許可基準に適合するかを審査します。最終的には、定期的に開催される農業委員会での議決を経て、許可・不許可が決定されます。結果は、指令書として、申請者である売主(貸主)と買主(借主)に通知されます。この申請の構造は、他の許可申請でも基本的には同じです。

 

 (2)申請する事項(申請書)

 申請書には、農地法第3条の許可を得るのに必要な項目を記入します。農林水産省の規定する様式では、A413頁にもなりますが、該当するところのみ記入すればいいので、実際の記載量は膨大ではありません。主要なものはつぎのとおりです。

 ・売主(貸主)の氏名又は名称と住所又は所在地
 ・買主(借主)の氏名又は名称と住所又は所在地
 ・売買(賃借)する土地の、所在・地番・登記地目・現況地目・面積・売買価格(賃料)
 ・売買(賃貸借)契約の要旨
 ・自作地、貸付地の内訳 など

2 農地法第3条の規定による許可申請書(例) 

 

適用される法令を確認して、該当箇所を記入します。適用法令などは、事前に申請する農業委員会の事務局に相談しておいたほうが安心です。申請書の見本は図2のとおりです。農業委員会により、書式は異なることが多いですので、実際に申請する場合は、申請する農業委員会から交付を受けるか、ホームページからダウンロードしてください。

 3.審査結果

 農業委員会での審査結果は、指令書という形で通知されます。そこには、理由も含め記載されています。通知が許可だった場合は、契約は効力を発しますので、売買の手続きや登記が可能になり、新たな利用者が農地を使用収益することができます。不許可または却下の場合は、契約は効力を発しませんので、農地の権利者は現状のままとなり、新たな使用収益を始めることはできません。不許可または却下の理由が、補正できるものであれば、必要な補正を行って再度申請することも可能です。

 4.結び

 農地・採草放牧地の農業資源としての有効な利用と、地域との調和を図る実効的な措置として、農地法第3条の規定は機能しています。農地・採草放牧地の新たな利用を検討する場合は、農地法はじめ関連法規の趣旨を十分に踏まえた利用計画を立て、所要の手続きを適正に行っていくことが大切です。 

 本日も最後までご覧いただきありがとうございました。法令の内容を細かく見ていくと、今回の説明した内容と異なる構造の申請もあります。基本的な構造をまず理解するのが重要と考えていますので、基本的な内容の話を続けたいと思います。次回は、農地法第4条について取り上げたいと思います。 

(参考文献)
農地法読本三訂版            宮崎直己著 20166月 大成出版社
農地法の解説改訂二版          201611月 全国農業委員会ネットワーク機構 (一社)全国農業会議所
新・よくわかる農地の法律手続き改訂三版 201611月 全国農業委員会ネットワーク機構 (一社)全国農業会議所
 

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